「事情があり働けない」「お金がない、助けてほしい」という人のなかには、生活保護の申請を検討している方もいるでしょう。
生活保護を受けると、毎月10~20万円程度の生活保護費が国から支給されます。。
しかし、お金を受け取れる代わりにさまざまな制約があるため、メリットだけでなくデメリットも理解しておくことが大切です。
生活保護の主なデメリット
- 所有できる物に制限がある
- 住む場所に制限がある
- 自由にお金を使えない
- ローンを組めない
- クレジットカードを持てない
- ケースワーカーとの定期面談が必要
- 家族に生活保護の受給がバレる
- 生活保護からの復帰が難しい
この記事では、生活保護を受けるデメリットについて解説します。あわせて、生活保護のメリットや適用要件、生活保護を受給できない人の特徴などについても確認していきましょう。
生活保護とは?どんな制度のことを指す?
生活保護は、以下のような状況に立たされている方を助けるために作られた制度です。
- 怪我が原因で働くことができない
- 働いているのに生活費が足りない
- 病気で働けず貯金も底をついた
まずは、生活保護がどのような制度なのかを具体的に解説していきます。
生活保護は国が経済的な援助を行う制度
厚生労働省は、生活保護制度について以下のように説明しています。
資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度です。(支給される保護費は、地域や世帯の状況によって異なります。)
引用元:厚生労働省「生活保護制度」
つまり生活保護制度は、怪我や病気で働けない方や毎日の生活を送るのが難しい方に、国が経済的な援助を行う制度のことです。
日本国憲法第25条第1項に「すべての国民には、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある」といった旨の記載があるように、最低限度の生活を営むのが難しいと判断された場合は制度を利用できます。
生活保護の申請は国民の権利
厚生労働省が「生活保護の申請は国民の権利」と明言しているとおり、生活が困窮し日常生活を送ることが難しい場合は、居住する自治体の福祉事務所へ相談するとよいでしょう。
しかしながら、生活保護の受給資格がある世帯のうち、およそ2割しか利用していないことがわかっています。受給資格を持つ世帯の6〜9割が利用しているヨーロッパと比較すると、日本の生活保護利用率は非常に低いといえるでしょう。
また、誰にでも生活保護の申請ができる権利がある一方で、「譲渡禁止」「生活上の義務」「届出の義務」「指示等に従う義務」といった義務もあることが、生活保護法で定められています。
生活保護を受給する権利を行使するなら、同時に上記のような義務も果たさなければなりません。
生活保護を受けるデメリットについて
生活に困窮している人が国からの経済的な援助を受けられる生活保護制度ですが、お金がなく生活に困っている方にとっては、メリットしかないように思うかもしれません。
しかし、生活保護を受給する場合は、メリットだけではなく上記画像のようなデメリットもあるため、申請する前にしっかりと確認しておくことが大切です。
所有できる物に制限がある
まず、生活保護を受給するデメリットとしては、所有できる物に制限があることが挙げられます。生活保護を受ける条件の一つに「資産がないこと」があるため、資産となる物を所有している場合はそれらを売却して生活費に充てなければなりません。
- 不動産
- 自動車やバイク
- 貴金属
- 預貯金
- 生命保険や学資保険
- 債券などの有価証券
また、生活保護の受給が開始してから資産となる物に変動があった際は、その都度申告して生活保護の費用を調整しなければならないことが、生活保護法第61条で決められています。
(届出の義務) 第六十一条 被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。
引用元:e-Gov法令検索「生活保護法」
住む場所に制限がある
生活保護から支給される家賃補助は、居住するエリアや世帯人数によって上限が定められています。つまり、今住んでいる家の家賃が家賃補助よりも高い場合は、家賃補助の金額に収まる家に引っ越さなくてはなりません。このような理由で引越しが必要になった場合、引越しにかかる費用は支給してもらえることもあります。
また、賃貸ではなく持ち家の場合は、住宅ローンを組んでいると生活保護を受給できない可能性が高いでしょう。住宅ローンは、生活保護費では返済できないためです。ただし、住宅ローンが完済間近の場合は受給できるケースもあります。
住宅ローンのない持ち家に資産価値がある場合も、基本的には売却しなければ生活保護を受給できません。しかし、不動産の価値が低く、なおかつ売却すると居住する家がなくなる場合は、居住したまま生活保護を受給できることもあります。
自由にお金を使えない
生活保護費は、食費・家賃・子どもの教育費といった生活費に使うために支給されるものです。そのため、貴金属やブランド品はもちろん、仕事などに使用する目的でない限りは車も所有できません。
また、娯楽目的で観光・旅行をする場合、毎月の生活保護費の余剰金から費用を捻出する必要があります。その際も届け出が必要で、ケースワーカーに旅行の目的を報告しなければなりません。観光費・旅行費の金額によっては収入認定され、生活保護費の返還を求められる場合もあるため注意が必要です。
このように、趣味や娯楽に自由にお金を使えないのも、生活保護のデメリットといえるでしょう。
ただし、親族の冠婚葬祭やお墓参りのための帰省、修学旅行、公的機関主催の国際的な大会に参加する場合などは収入認定されません。
ローンを組めない
生活保護を受給していると、基本的にローンを組めません。生活保護制度は、最低限度の生活保障・自立の助長を目的としているため、生活保護費をローンの返済に充てることが原則禁止されています。
勝手に借り入れやカードローンの契約をすると、生活保護費の返還を求められたり、生活保護の利用自体を取り消されたりするおそれもあるため、気を付けなければなりません。
クレジットカードを持てない
生活保護を受けるとクレジットカードを作れないわけではありませんが、生活保護を受給しているということは支払い能力が乏しいことを意味します。つまり、クレジットカードの申し込みをしても、クレジットカード会社の審査で落とされる可能性が高いでしょう。
クレジットカードを作ること自体は、ケースワーカーへの相談次第で可能な場合もありますが、リボ払いや分割払いでの利用は借金と判断されるため注意しなければなりません。
生活に必要なものなどを購入する際、基本的には現金払いをするように指導されますが、クレジットカードでの支払いが必要な場合も、一括で支払いをしなければならないケースがほとんどです。
ケースワーカーとの定期面談が必要
生活保護を受給している間は、年に数回ケースワーカーと面談を行わなくてはなりません。この定期面談は一般的に「訪問調査」と呼ばれ、ケースワーカーが抜き打ちで自宅を訪問することもあります。その際、給与明細や通帳の提出、求職活動の状況や生活保護費の用途などの報告が必要です。
定期的にケースワーカーが自宅に来るため、周囲の目が気になる、ケースワーカーにプライバシー面を見られるというデメリットがありますが、訪問調査に応じないと生活保護が打ち切られる可能性も否定できません。
訪問調査の頻度は受給者の状況によって異なり、生活保護の受給開始直後や一人暮らしの高齢者に対しては頻繁に訪問するケースもあります。
家族に生活保護の受給がバレる
生活保護を利用するには、頼れる家族がいないことが条件となるため、親族に対して申請者本人へ援助ができないかの確認連絡がいきます。
援助可能かの確認だけでなく、精神面や生活面の支援・補助といった行政だけでは対応できないところをサポートできる存在を探す目的もあるため、基本的に親族への確認連絡は避けられません。そのため、生活保護を申請していることが家族にバレてしまう点も、デメリットの一つでしょう。
この確認連絡は、直系血族となる親・子や兄弟姉妹だけでなく、3親等の親戚までいくこともあります。しかし、家族からDVや虐待を受けている、親族に多額の借金があるなどの事情があるときは、確認連絡を行わないケースもあるので、都度相談してみましょう。
生活保護からの復帰が難しい
生活保護は、生活に困窮する人を保護し、最低限度の生活を保障するとともに、自立することを助長するための制度です。しかしながら、生活保護受給者のなかには生活保護によって生活が安定し始めると、自ら求職活動をして収入を得ることが難しくなるケースが多くあります。
これは、働かなくても一定のお金が入ってくる状況に慣れてしまうだけでなく、社会に属さない期間が長くなると社会に出ることに対して恐怖心が大きくなるためです。
高齢者が生活保護を受ける場合は、その後働く予定がない可能性もありますが、20〜30代など若い世代が一度生活保護を受けると社会復帰が難しくなります。
生活保護の申請は国民の権利のため、致し方ない理由で申請するのは問題ありません。しかし、働きたくないなどの理由で生活保護の利用を検討しているなら、まずは転職や借り入れなど生活保護の前にできることを考えたほうがよいでしょう。
生活保護を受けるメリットについて
ここまで生活保護を受けるデメリットについて解説してきましたが、もちろん生活保護には上記画像のような多くのメリットもあります。
生活保護の利用を検討している方は、デメリットとメリットをしっかりと理解したうえで申請しましょう。ここからは、生活保護を受けるメリットについて解説していきます。
生活保護費を受け取れる
生活保護を受ける最大のメリットは、何といっても生活保護費を受け取れる点です。最低限の生活を営むのに必要な生活費として、以下の扶助を受けられます。
生活を営む上で生じる費用 | 扶助の種類 | 支給内容 |
---|---|---|
日常生活に必要な費用 (食費・被服費・光熱費等) | 生活扶助 | (1)食費等の個人的費用 (2)光熱水費等の世帯共通費用 を合算して基準額を算出。 特定の世帯には加算があります。(母子加算等) |
アパート等の家賃 | 住宅扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
義務教育を受けるために必要な学用品費 | 教育扶助 | 定められた基準額を支給 |
医療サービスの費用 | 医療扶助 | 費用は直接医療機関へ支払 (本人負担なし) |
介護サービスの費用 | 介護扶助 | 費用は直接介護事業者へ支払 (本人負担なし) |
出産費用 | 出産扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
就労に必要な技能の修得等にかかる費用 | 生業扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
葬祭費用 | 葬祭扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
所得税・住民税の免除
生活保護受給者になると生活保護費を受け取れるだけでなく、所得税や住民税といった税金が免除されるのもメリットの一つです。
参考までに紹介すると、宮城県の公式サイトでは、生活保護世帯は以下のような減免措置を受けられると記載されています。
種類 | 申請手続 | 手続窓口 | 備考 |
---|---|---|---|
住民税 | 生活扶助以外の扶助の場合は減免申請要 | 市区役所 町村役場 | 生活保護を受けると自動的に非課税扱いになります。 |
個人事業税 | 要 | 県税事務所 | 所長が必要と認めた場合は免除となります。 |
固定資産税 | 要 | 市区役所 町村役場 | 各市町村の条例により、減免となる場合があります。 |
心身障害者扶養共済掛金 | 生活困窮により、掛金の納付が困難な場合は免除 | ||
国民年金保険料 | 生活扶助以外の扶助の場合は減免申請要 | 生活保護を受けると納付が免除となります。 | |
JR通勤定期券の割引 | 要 | 福祉事務所 | 通勤定期乗車券が3割引きで購入できます。 |
NHK放送受信料 | 全額免除となります。 |
保険料の免除
生活保護を受けると、国民年金保険料の支払いも免除されます。保険料の免除を受けるためには、市区町村の役場への「国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届」の提出が必要です。
また、国民年金保険料の免除期間の老齢基礎年金の金額は、以下のように計算し減額されます。
- 2009年3月以前の期間は1ヵ月を1/3
- 2009年4月以降の期間は1ヵ月を1/2
生活保護を受給している間は国民年金保険料が免除されるものの、将来的に受け取れる年金が減ってしまうため、見方によってはデメリットにもなりうるでしょう。免除された分の年金を満額にしたいなら、十分な収入を得て保険料を支払えるようになった際に、追納という形で保険料を納める必要があります。
NHK受信料の免除
税金や保険料だけでなく、NHKの放送受信料が全額免除される点も、生活保護を受ける際に得られるメリットでしょう。
NHKの放送受信料を免除してもらうためには、「放送受信料免除申請書」を提出する必要があります。
自治体へ申請書を提出して免除事由の証明を受けたあと、NHKに放送受信料免除申請書を提出し、「免除受理通知書」を受け取ったら手続き完了です。
具体的な申請方法は、NHK公式サイトの「放送受信料の免除について」に記載されているため、詳しく知りたい方はご確認ください。
医療費・健康保険料の免除
生活保護を受けている間は、国民健康保険の被保険者ではなくなるため、基本的に医療費の全額を医療扶助によって負担してもらえます。医療扶助は原則現物支給のため、医療費の支払いはありません。
また、医療扶助は以下の範囲内で実施されます。
参照元:厚生労働省「生活保護の医療扶助について」
- 診察
- 薬剤や治療材料
- 医学的処置、手術やその他の治療・施術
- 自宅での療養上の管理や、その療養にともなう世話その他の看護
- 病院または診療所への入院や、その療養にともなう世話その他の看護
- 移送
医療費や健康保険料のほかに、介護サービスの利用料も免除されます。
生活保護が適用される要件とは?
生活保護は、申請すれば誰でも利用できるというわけではありません。以下の適用要件をクリアしていると判断された場合に、利用が可能です。
- 収入が最低生活費に満たない
- 資産がない
- 就労ができない
- 親族からの援助が難しい
- 年金などの給付制度を利用できない、利用しても生活できない
生活保護は、最低限の生活を営むことができるほどの収入がない方や、働けない方を対象とした制度です。つまり、普通に働ける人や資産を所持している人は、生活保護の受給対象にはなりません。
最低生活費とは?
最低生活費とは、日本国憲法第25条第1項にも記載されている「健康で文化的な最低限度の生活」を送るために最低限必要な費用のことです。
具体的には、生活費・医療費・住宅費・教育費・介護費・障害者加算・母子加算などをすべて含めた費用が該当しますが、居住地域によって変動します。
生活保護制度の生活扶助基準額を算出する際は、以下の資料を参考にしてください。
参考:厚生労働省|生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和4年4月)
生活保護を受給できない・受給資格を満たさない人とは?
生活保護を受けるとさまざまな制限がありますが、最低限の生活を送ることが厳しい人にとっては、非常にありがたい制度であるのも事実です。
しかし、生活保護には先ほどのとおり適用要件があり、申請すれば誰でも受けられるというものではありません。ここからは、生活保護を受給できない人の特徴を見ていきましょう。
資産を所有している
生活保護を受けるにあたり、不動産や車、貯金、生命保険といった資産は所有できず、申請する前に資産の売却が必要です。売却したうえで、生活費が足りない場合のみ生活保護が受けられます。
車に関しては、生活や就労のためなどやむを得ない理由であれば所有しても良いとみなされるケースもありますが、それ以外の資産の所有は認められていません。ただし、洗濯機や冷蔵庫といった生活に必要な家電などは所有が認められています。
ほかにも、スマートフォンやパソコンも基本的には所有可能ですが、用途によっては所有が認められない場合もあるでしょう。
働こうと思えば働ける
生活保護制度は、怪我や病気などやむを得ない理由で仕事ができず、生活に苦しむ人をサポートする制度です。仕事をしたくないという理由で働かず、生活できない人を助ける制度ではありません。
そのため、仕事を選ばなければ働ける人、働こうと思えば働ける人に関しては、生活保護が認められない可能性が高くなります。一方で、高齢者やシングルマザー、身体が不自由な人など、就労が難しい場合や仕事が見つかりにくい場合は受給対象になりやすいでしょう。
また、20〜30代の比較的若い世代で体力があり身体的に健康であっても、うつ病などの精神疾患により障害認定を受けていれば、生活保護を受給できるケースがあります。
援助してくれる家族がいる
本人が生活に困窮していても、親族に援助してくれる人がいるときは、基本的に生活保護を受給できません。
ただし、なかには家族と連絡が取れなかったり縁を切ったりしている人もいるため、援助してもらえる可能性がある親族がいても、生活保護を認めてもらえるケースもあります。
また、先述のとおり、生活保護の申請を行った場合は基本的に親族への確認連絡(扶養照会)が必要です。しかし、近年では申請者本人が拒否する場合、親族へ確認連絡をしないこともあります。
給付金制度を利用している
年金や児童手当など、国が実施している給付金制度で生活ができる場合は、受給不可となることも少なくありません。国や自治体が行っている給付金制度のなかで受給対象のものがあるなら、生活保護の申請をする前に申し込みましょう。
年金や手当などを受け取っても最低生活費に満たない場合は、足りない分を生活保護費として支給してもらえます。