広告やランディングページで「売り込む」のではなく、良質なコンテンツでユーザーと「関係性を構築する」コンテンツマーケティングが、2013年頃より日本でも隆盛してきました。
コンテンツマーケティングに必勝法はなく、一朝一夕に成果が出るわけでもありません。
「コンテンツマーケティングを始めたいが、知識がなく、何から手をつければ良いかわからない」「コンテンツマーケティングをしたくてオウンドメディアを立ち上げたものの、成果が出ず、改善策を模索している」といった悩みを抱えている企業も少なくないでしょう。
この記事では、サクラサクマーケティング株式会社・コンサルティング部部長の高橋が分析した「エンジニア×求人」の事例をもとに、ねぎお社長が解説します。
人材・転職業界でコンテンツマーケティングに取り組まれている方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の内容は動画でも紹介していますので、あわせてご覧ください。
オウンドメディアの成功事例~「エンジニア×求人」の最難関分野で月間アクセス40万を達成
今回ご紹介する事例は、ある人材企業がSEO最難関分野とされる「エンジニア×求人」をテーマに運営していた、Webサイトへの施策です。
成果からいうと、弊社がパートナーとしてSEO施策に携わり、月間40万アクセスを達成。さらに、新規ITエンジニア登録数が月500人以上を誇るWebサイトへと成長させられました。
日本のITエンジニア人口は、約150万人といわれています。この母数を考慮すると、月間40万アクセスは、かなり大きなインパクトであることがうかがえるのではないでしょうか。
なお、弊社が施策に係る前のアクセス数は、この4分の1以下でした。
上のグラフは、SEO分析ツールAhrefs(エイチレフス)で書き出した、このWebサイトの成果の推移です。
上の水色のグラフは、トラフィックの推移を表しています。下のオレンジ色のグラフは、オーガニックキーワード数(Google検索で上位表示されているキーワード数)の推移です。1~3位のキーワード数が茶色、4~10位のキーワード数が濃いオレンジ色、11~100位のキーワード数が薄いオレンジ色で色分けされています。
グラフを見ていただくとわかるとおり、対策開始から半年ほどは、ほとんど目ぼしい成果が出ていません。コンテンツマーケティングを成功させるには、「質」とともに「量」も重視してコンテンツ(記事)を制作していく必要があります。
このWebサイトでも長期戦を覚悟して、1年をかけて150記事ほどを蓄積しました。大きな成果が見え始めたのも、ちょうどその頃からです。
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【エンジニア×求人業界】契約に至った経緯・背景
このWebサイトに対して行なった具体的な施策を取り上げる前に、前提情報として「エンジニア×求人業界」が直面している状況と、クライアント企業が弊社にお声がけくださった経緯をご紹介します。
近年「エンジニア×求人業界」は2つの面から、苦しい状況に立たされています。
1つは、日本のIT人材の不足が深刻化していることです。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、不足数は年々増加傾向にあり、2030年には約45万人が不足する見込みとなっています。
なかでもエンジニア職は、人材の需要に対して、供給が圧倒的に不足しているのが現状です。人材業界各社は、運営する求人ポータルサイトに莫大な広告費用やSEO費用をかけて、貴重なエンジニア人材の獲得競争を繰り広げています。
もう1つの難局は、Googleしごと検索(Google for Jobs)の台頭です。Googleしごと検索のリリースによって、ユーザーはわざわざ求人サイトを介さなくても、Googleの検索画面から求人情報へたどり着けるようになりました。
(Googleしごと検索の画面)
求人ポータルサイトというフォーマットが飽和と存在意義の限界を迎えるなかで、今回のクライアント企業は、「生き残りを賭けて新たな一手に出たい」と考えました。その「一手」として、弊社の実績に目を留めてくださり、オウンドメディア構築のご相談をいただいたという経緯です。
【エンジニア×求人業界】実際に行なった施策のポイント
クライアント企業のニーズは、「エンジニアを求人ポータルサイトに集めるためのSEO対策」でした。エンジニアからの認知向上を図り、「この求人サイトに登録しよう」と動機付けるために行なった施策は、次の2つです。
オウンドメディアを立ち上げ、エンジニアの悩みに寄り添うコンテンツを発信
求人ポータルサイトのメインコンテンツは求人票ですが、求人票にはコンテンツとしての価値がほとんどありません。同じ会社が複数のポータルサイトに求人票を掲載するのが一般的ですし、ポータルサイト上では企業名を伏せている(実際の応募者に対して企業名を開示する)求人票も少なくないからです。
このように、求人票では競合サイトとの差別化を図りづらく、ユーザー(求職者)からしても「どこの求人サイトでも、載っている求人情報は基本的に同じ」「どこの求人サイトで仕事を探しても、特に差は生じない」といった認識が一般的でした。
「求人サイトが、求人票以外でユーザーに発信できる有益な情報とは何か?」を検討するなかで見出したのが、「エンジニアの悩みに寄り添うコンテンツ」です。転職前や転職中のエンジニアに寄り添い、ユーザーエンゲージメントを高めることにしました。
関連記事:SEOに強いオウンドメディアの作り方とは?立ち上げ前に準備すべき戦略・CMS・デザイン・制作外注などについて解説
現役エンジニアのインタビューも交え、ターゲットKWを徹底的に精査
クライアント企業からは、当初「エンジニア求人で検索上位を狙いたい」と要望を受けていました。しかし、「エンジニア×求人業界」のWebサイトはすでに飽和状態にあり、「エンジニア 求人」といったビッグワードでの検索上位表示は至難の業です。
そこで、「転職前や転職中のエンジニアはどのようなことを考え、悩み、検索するのか?」を丹念に掘り起こし、検索意図にマッチした良質な記事を制作する戦略で、上位表示を狙いました。
この戦略において、キーワードの精査は最も重要な工程の一つです。一般的には、検索回数をベースにキーワード選定するのがセオリーでしょう。しかし、それではボリュームゾーンしかカバーできません。
ボリュームゾーンには現れないものの、当事者にとって切実な悩みを深堀りするために、現役エンジニアへのユーザーインタビューに力を入れました。
「自分の強みを業務に活かしきれていない」「エンジニアを欲するわりには、経営層のエンジニアの仕事に対する理解が薄い」「エンジニアの待遇を鑑みていない企業も多い」といったリアルな声をインタビューで集めるのは、手間がかかるものです。しかし、それが結果的にユーザーの検索意図をキャッチし、オウンドメディアの成功につながりました。
【エンジニア×求人業界】成功のおもな要因
それでは、今回のオウンドメディアを成功に導いたおもな4つの要因を見ていきましょう。
経営的な「覚悟」を決めて、施策に取り組めたこと
前述のとおり、オウンドメディアに大きな成功の兆しが見え始めたのは、立ち上げから1年が経った頃でした。特に最初の半年は、芽が出ずとも、ひたすら種を蒔き続ける期間でした。
コンテンツマーケティングはコンバージョンの数値で効果を測りやすいこともあり「半年以上続けたが、成果が出ないので諦めた」と、オウンドメディアの運営が頓挫してしまう企業も少なくありません。
この事例が成功した大きな要因の一つは、半年ベースで費用対効果が赤字でも、クライアント企業が諦めなかったことです。むしろ、覚悟をもってオウンドメディアの育成にリソースを振りきっていました。
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対策すべきKWを慎重に見極め、やみくもに範囲を広げなかったこと
早々に育成を諦めてしまうこと以外に、検索ボリュームが大きいビッグワードのSEO対策に傾倒してしまうことも、オウンドメディアのよくある失敗例です。
ビッグワードでの上位表示で得られる恩恵は、もちろん大きいものです。しかし、すでに上位表示されている競合サイトに対してSEOで優位に立つには、綿密な戦略とリソース投入が必要になります。「下手な鉄砲も数撃てば当たる」は、SEOの世界では通用しません。
今回の事例では、ユーザーインタビューを行なうなど、エンジニアの悩みや困りごとに寄り添うキーワード選定に、多大なエネルギーを注ぎました。そして、キーワードにマッチする良質なコンテンツ群で検索上位を獲得していき、ドメイン全体(オウンドメディアそのもの)に対する検索エンジンからの信頼を得るに至ったのです。
的確なキーワード選定には、SEOの知識とノウハウが欠かせません。ここに、実績と経験が豊富なSEOコンサルタントとタッグを組んでオウンドメディアを育成する、大きなメリットがあります。
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戦略的かつ継続的な思考のもと、ひたむきにメディアを育成できたこと
ここまで2つ挙げた要因に表れているように、オウンドメディアの運営には、「戦略的な思考」と「継続的な思考」の二軸のバランス感覚が重要です。
具体的には、できるだけ効率的に、無駄な戦いを避けて成果を出す「戦略的な思考」でキーワード選定しながらも、すぐさま立ち現れない成果に怯まず、「継続的な思考」でコツコツと着実に実績を積み上げるかたちです。
3ヵ年計画など、中長期的な視点で小さな努力を焦らず積み重ねていく「未来志向」が、オウンドメディアを軌道に載せるカギといえるかもしれません。
担当者自身がターゲットに興味・関心を持ち、楽しくメディア運営ができたこと
今回の事例では、クライアント企業の担当者も弊社の担当コンサルタントもエンジニア職の経験がなく、当初は技術的・業界的な専門的知識も持ち合わせていませんでした。
しかし、インタビューなどで多くのエンジニアの方と接しながらコンテンツ制作を進めていくなかで、どんどん「自分ごと」化していったのです。例えば「セカンドキャリアとしてエンジニア職を選ぶのは現実的か?」「エンジニアの具体的なキャリアパスは?」などの問いが生じました。
コンテンツ制作陣の前向きな好奇心が熱気となり、ユーザーに寄り添うコンテンツを量産する原動力になりました。仕事として機械的にコンテンツをつくるだけでは、ユーザーに深いところで向き合えませんし、月間40万アクセスにおよぶメディアには育たなかったでしょう。
【エンジニア×求人業界】制作にあたって最も大変だったこと
もちろん、成功を収めるまでの過程にはいくつか苦労もありました。
成果が出ない時期にも、クライアント企業のモチベーションを保つこと
成功要因の1つ目で、クライアント企業の「覚悟」を取り上げましたが、実際に成果が見えないなかで施策を続けるのは辛いものです。
今回の事例でも、オウンドメディア立ち上げから半年間はどれだけコンテンツを作っても1件のコンバージョンにもつながらず、非常に苦しい我慢の時期でした。そのような状況では、諦めるには至らないまでも、運営チームのモチベーションは下降しがちです。
費用対効果の証明は難しかったものの、弊社コンサルタントは継続的思考を持ち続けることの重要性を繰り返し訴え、明るい展望を示し、運営チームが「産みの苦しみ」を乗り越えるのを支えました。
他社との明確な差別化をすること
オウンドメディア部分にいかに良質なコンテンツを蓄積しても、求人ポータルサイトの要が求人票であることに変わりはありません。魅力的な求人票が充実していなければ、ユーザーは競合サイトに流れてしまうでしょう。サイトの存在感そのものについて、競合サイトと明確な差別化を図る必要があります。
その意味で今回のオウンドメディアは、ユーザーに有益なコンテンツを発信するとともに、コンテンツを通して、この求人サイトを利用するメリットや独自性をユーザーに訴求する役割も担っています。
具体的な施策として、以下のようなユーザーが体験・体感できる仕かけを、現在進行形で次々と展開中です。
- プレ登録したエンジニア向けの勉強会や交流会を企画して、その模様をコンテンツ化
- サイトに求人を出している企業で働く先輩エンジニアのインタビュー記事を掲載
【エンジニア×求人業界】オウンドメディア事例3選
「エンジニア×求人業界」のオウンドメディアは、今回ご紹介した事例だけではありません。弊社が手がけたメディアではありませんが、「エンジニア×求人業界」の代表的なオウンドメディアを3つご紹介します。
エンジニアtype|“変化の時代”を生き抜くエンジニアを支援するメディア
「日本の技術者たちの仕事人生を、もっと刺激的に、もっと豊かに変えられるように」をタグラインに掲げたメディアです。国内外の技術者、テクノロジー企業、研究者などへの取材コンテンツを軸に、技術者向けのキャリア情報や転職情報を幅広く発信しています。
グローバルメニュー、記事上のパンくずリスト、記事下のバナーなどが、自社の求人サイトへの導線になっています。
エンジニアHub|次のキャリアを目指すWebエンジニアに、驚きとワクワクを提供する
「年収500万円以上」「自社プロダクトを持つ企業」への転職を目指す、若手Webエンジニア向けの求人サイトが運営するメディアです。求人サイトのターゲットに照準を合わせた、Web業界の最新技術やトレンドを取り上げたコンテンツが充実しています。
オウンドメディアとしてのトップページはなく、あくまで求人サイト内の記事コンテンツの位置付けで展開しています。
キャリアハック|IT業界で働く人の未来を応援するWebメディア
「世の中を沸かせ、動かす人たちの行動思想やストーリーをお届けします」をタグラインに掲げ、テック業界で働く人に「無数にある選択肢」を提示しているメディアです。独自の切り口での特集記事や、業界のキーマンへのインタビュー記事を主軸に展開しています。
自社の求人サイトへの誘導よりも、各種SNSへの導線を強化しているのが特徴的です。これは、転職検討前のユーザーの囲い込み戦略の一つと見てよいでしょう。
https://careerhack.en-japan.com
【エンジニア×求人業界】高難度のフィールドでは、経営的な我慢と体力、ポジティブ思考が最重要
IT人材の需要に対する供給難、そして求人ポータルサイトというフォーマットが飽和するなか、「エンジニア×求人業界」はSEOの最難関分野といわれています。
この記事では、このフィールドで弊社が手がけるオウンドメディアが成功を収められた要因として、次の4つをご紹介しました。
- クライアント企業が「覚悟」を決めて取り組んだ
- 手間を惜しまず、SEO対策するキーワードを慎重に見極めた
- 未来志向をもって、戦略的かつ継続的に取り組んだ
- 非エンジニア出身の担当者自身が、前向きな好奇心をもって運営に取り組んだ
弊社は、豊富な知見と実績を携えて、数々の企業のオウンドメディア戦略を設計・伴走してきました。コンテンツマーケティングやオウンドメディア運営をご検討の際はぜひ、弊社のオウンドメディア構築支援サービスをご検討ください。無料相談を行っておりますので、以下のリンクからお申し込みください。