自社の商品・サービスの認知向上やブランディングのツールとして、自社保有のWebサイトやブログを活用したオウンドメディア(Owned Media)が注目されています。
オウンドメディアを立ち上げて軌道に乗せていくには、質と量の両輪でコンテンツを制作していくノウハウやリソースが必要です。
「オウンドメディアを始めたいが、ノウハウがない」「オウンドメディアの運営に取り組んでいるが、成果が出ない状況が続いている」といったお悩みをお持ちの企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、弊社が手がけたHR-Techのオウンドメディアにおける具体的な事例を、ねぎお社長が解説します。特に人材業界の企業やSaaS企業の方に、参考事例としてご活用いただけると幸いです。
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なお、この記事で解説する内容を動画でチェックしたい方は、以下よりご覧ください。
人材業界のオウンドメディアの成功事例~わずか半年で年間売上目標を達成!~
ここからご紹介する事例は、ある人材企業の新規SaaS(HR-Techサービス)のオウンドメディアです。コンテンツマーケティングを得意とする弊社が、パートナーとして立ち上げから携わらせていただきました。
このオウンドメディアの大きなトピックは、リリースからわずか半年で、年間目標比200%の受注数を獲得できた点です。
通常、オウンドメディアが成果を出すまでには、かなりの時間を要します。多くのオウンドメディアは検索流入でユーザーを獲得しますが、良質なコンテンツを蓄積していないと、検索エンジンから認知・評価されないからです。
今回のクライアント企業にも、提案時には「オウンドメディアは、長ければ2年ほどの時間をかけて育成していくものです。中長期的にじっくり取り組んでいきましょう」とお伝えしていました。
それではなぜ、半年でこれだけの成果を得られたのでしょうか。その要因となった綿密な戦略設計と施策の実行について、次章以降、順を追ってご紹介します。
【オウンドメディア×人材業界】契約に至った経緯・背景
ここ5年ほどで、人事領域の業務効率化を図るITツール、いわゆるHR-Techが急速に発展・普及してきました。背景には、ビッグデータやAIの活用、DX(Digital Transformation)推進の流れがあります。
今回のクライアントである人材企業は、HR-Techのクラウドサービス黎明期に、労務管理や採用管理、勤怠管理といったサービス群をSaaSでリリースしました。
「自社サービスを広く宣伝したい」と、某SEO企業出身の先方担当者が、SEOに関する弊社の経験・実績に目を留めて依頼してくださったことが、オウンドメディア立ち上げのきっかけです。
【オウンドメディア×人材業界】実際に行なった施策のポイント
まず、サービス認知向上の施策としてオウンドメディアを選定した理由と、コンテンツ戦略のポイントは、次のとおりです。
オウンドメディアを立ち上げ、ドメインパワーを底上げ
依頼いただいた際のクライアント企業の要望は、「ビッグワードでの検索上位を狙いたい」というものでした。たしかに、労務管理・採用管理・勤怠管理などのキーワードで上位表示を獲得できたら、間違いなくユーザーからの問い合わせは増えるでしょう。
しかし、新規サイト(新規ドメイン)が検索エンジンに評価されるためには、ビッグワード対策をしたランディングページを作成するだけでは不十分です。すでに上位表示されている競合他社に対してSEOで優位性を得るには、外部のさまざまなWebサイトで言及されていることや、ユーザーに有益なコンテンツを蓄積していることが重要となります。
そこで、ビッグワードのSEO対策は同時並行で実施していきながら、オウンドメディアを育てていくことを提案しました。
関連記事:SEO対策にかかる時間は?期間を短縮する効果的な方法7選を紹介
サービスの機能的価値ではなく、ターゲットの悩みにフォーカスしたコンテンツを制作
オウンドメディアをどういった方向に育てていくのかに関しては、まず、「横(競合他社)ではなく、前(ユーザー)を見ましょう」とクライアント企業にお伝えしました。
初期調査で、検索上位を占めている競合製品・サービスが、おおむねソフトウェア企業のものであることがわかっていました。それらは、システム導入を担う情報システム担当者や総務担当者をターゲットに据えて、サービスが機能的にいかに優れているかを謳っているものが多かったのです。
クライアント企業のサービスのターゲットは、人事担当者です。例えば、毎月何時間もかかってしまっている作業をワンクリックで処理できるようになるなど、人事担当者が業務効率化を肌で感じられるサービスでした。
そこで、オウンドメディアのコンセプトを「人事担当者の役に立つ」に設定しました。問い合わせが取れるビッグワードを直接狙うのではなく、人事担当者がよく調べるキーワードで上位表示して露出を増やし、サービスが人事担当者の目に留まる地固めをしていく戦略です。
キーワード選定においては、人事担当者が持つ悩みや困りごとをリサーチして、カスタマージャーニーを綿密に練ることで絞り込んでいきました。それらのキーワードで集中的にSEO対策していくことで、ターゲット層からの反応を効率的に集められるオウンドメディアに育っていったのです。
【オウンドメディア×人材業界】成功のおもな要因
このオウンドメディアを成功に導いた要因を紐解くと、次の3点にあったことがわかりました。
まずは100記事!コンテンツの量をしっかり確保する熱意とエネルギー
「オウンドメディアを成功させるには、最低何記事必要ですか?」といった質問は、頻繁にいただくものです。この数字については、その企業が属している業界やサービス内容、目指しているゴール、現在のドメインパワーなど、さまざまな要素が絡み合うため、一概には決められません。
しかし、ざっくりとした目安としては、100記事程度の記事制作を念頭に置いておくとよいでしょう。実際に、オウンドメディアを一から立ち上げる場合には、「まずは100記事!」というくらいの心意気がなければ、成果を出すのは難しいのも事実です。
コンテンツ量を確保できるだけの熱量を持ち合わせているかどうかが、成功を左右するといっても過言ではありません。
今回の事例のクライアント企業は、スタッフが一丸となって「オウンドメディアを育てていこう」と強い思いを持たれていたうえに、それを実現するだけのエネルギーにあふれた「元気な会社」でした。
メディア育成を丸投げせず、自社で記事制作にコミット
オウンドメディアに掲載するコンテンツは、すべてを外注制作することも可能です。しかし、ペルソナやキーワードリスト、カスタマージャーニーに依存しきったコンテンツは、血の通わない「つまらないSEO記事」になるリスクをはらんでいます。
企業やサービスの熱量をターゲット層に伝播させるには、貴重な社内リソースを投じてでも、ライティング(記事の執筆)を内製化したほうがよいでしょう。ユーザー像ではなく、実際に相対している顧客を意識したコンテンツに仕上がるからです。
内製したコンテンツはユーザーに読まれ(求められ)やすく、外注先にすべて任せるよりも、オウンドメディアに成果をもたらす可能性が高まります。
もちろん、内製化を目指すもリソース不足でコンテンツ制作が頓挫してしまっては、元も子もありません。そうならないように、弊社のようなSEOのノウハウが豊富な会社をご活用いただく「部分外注」という方法があります。
部分外注では、内製の熱量とコンテンツの質・量・スピードを両立する、理想的な制作体制を構築可能です。
今回の事例のオウンドメディアも、クライアント企業が主体となってコンテンツ制作を進め、より専門的な部分のサポートや技術的なアドバイスを弊社が行なう体制を敷きました。そうしてスムーズにメディアの育成を図れたことが、最大の成功要因といえるかもしれません。
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マーケティングと営業で連携し、ベストタイミングのアフターフォローを実現
代表的なWebマーケティング手法であるリスティング広告(検索連動型広告)は、いわば刈り取り型の集客方法です。広告に対して「興味があるからクリックしてみよう」と能動的にアクションしたユーザーにアプローチしていきます。
一方、オウンドメディアは、ユーザーのより潜在的な興味・ニーズにアプローチしていかなければなりません。
例えば、「毎月のタイムカードの整理を効率化したい」というニーズに対して、「タイムカード管理を効率化するノウハウ10選」といったコンテンツを制作し、HR-Techサービスの資料請求につなげるといった方法です。
今回の事例では、資料請求を行なった見込み顧客に、適切なタイミングでフォローのご連絡をしたり、さらに役立つ資料を無償提供したりするなど、段階的に見込み顧客と信頼関係を築いていく営業の仕組みを構築しました。
このように、マーケティングと営業の歯車を合わせて、オウンドメディアのユーザー(潜在顧客)を見込み顧客、そして受注へとつなげられたことも、大きな成功要因です。
【オウンドメディア×人材業界】制作にあたって最も大変だった点
この事例のオウンドメディアも、順風満帆に成功を収めたわけではありません。特に、社内リソースの不足や、インテント(ユーザーの検索意図)への対応には苦慮しました。
制作目標に対するリソース不足
一日でも早く成果を得るには、良質なコンテンツを大量に、スピード感をもってオウンドメディアに掲載していく必要があります。しかし、それを実行するだけのリソースがなく、オウンドメディア運営に挫折してしまう企業も少なくないのが実態です。
リソース不足については、弊社のような外注先を上手に活用しながら、畑を耕すイメージでメディアを育てていく姿勢が重要です。また、オウンドメディア構築という大仕事への社内の理解も欠かせません。
今回の事例でも、メディアの方向性や方針について、クライアント企業内の雰囲気醸成のために背中を押したり、記事制作にコミットメントするメンバーに、いわゆるトレーニングプログラムを作ったりするなどの働きかけを行ないました。コーチとして隣で伴走するイメージです。
インテントと作りたいコンテンツが一致しない問題
この事例で最も苦労したのは、インテント(ユーザーの検索意図)とコンバージョン(Webサイトとしての成果)をどのように両立するかです。
例えば、カスタマージャーニーとも照らし合わせると、「勤怠管理ツール」でキーワード検索するユーザーには、「どのようなツールがあるのか知りたい」というニーズがあります。実際、検索上位に表示されるのは「勤怠管理ツール〇選」「おすすめ勤怠管理ツールランキング」といった紹介サイトが中心です。
このような場合、自社の勤怠管理サービスだけを紹介する記事を作っても、「勤怠管理ツール」の検索結果で上位表示されることは非常に難しくなります。
そこで対応策として、ランキング形式の記事を作成し、自社サービスを1位で紹介することで、インテントの充足とコンバージョン(サービス受注)獲得の両方を実現しました。
「他社サービスと比較して、自社サービスを1位に掲げるのは気が引ける」「オウンドメディアで競合サービスは紹介したくない」などの意見もあるかもしれません。しかし、メディアが中立的な目線で、網羅的に複数サービスを比較検討した内容であれば、ユーザーにとっては有益な情報となり、価値あるコンテンツになり得ます。
人材業界のオウンドメディア事例3選
最後に、弊社が手がけた事例ではありませんが、一般的に成功しているといわれている人材業界のオウンドメディアを3つご紹介します。
HR NOTE|人事の成長から、企業成長を応援するメディア
「人事の成長から企業の成長を」をコンセプトとして、採用領域、組織開発・人事管理領域、労務領域といった、人事業務に役立つ情報を配信しているメディアです。基礎知識からノウハウ、自社内外の事例まで、コンテンツの幅も多岐にわたっています。
各記事末尾の「関連記事」や、サイドバナーの「人気記事ランキング」で、検索エンジンから訪問したユーザーにサイトの回遊を促しているほか、記事検索ページでは、人事業務にまつわるキーワードをわかりやすく提示している点が特徴です。
また、コンバージョンへの導線としては、以下のような方法が採られています。
- ヘッダーやサイドバナーの目立つ位置に、メールマガジンの登録フォームを設置
- ヘッダーの「お役立ち資料」から、メールアドレスなどの情報入力で、資料やテンプレートを無償提供
キャリアハック|テック業界で働く人のためのWebメディア
「世の中を沸かせ、動かす人たちの行動思想やストーリーをお届けします」をタグラインに掲げ、テック業界で働く人に「無数にある選択肢」を提示しているメディアです。独自の切り口で特集を組んだり、業界のキーパーソンへのインタビューをコンテンツの主軸にしたりと、雑誌のようなメディア構成になっています。
コンテンツはカテゴリ階層化されておらず、記事ごとに付けられた複数のタグ(特集も一つのタグ)をクリックすることで、ユーザーがメディア内を有機的に回遊できる仕組みです。
自社サービス群(求人サイト)への直接的な導線は、フッターにバナーが表示されているのみで、SNSアカウントへの導線のほうが目立っています。これは、顕在顧客ではなく、潜在顧客との関係構築をオウンドメディアの目的としていることの一つの表れでしょう。
https://careerhack.en-japan.com
就職ジャーナル|「ホントは知りたい」がここに。
「#就活めんどくさい」「#就活ぶっちゃけ相談」などのタグからもわかるように、多くの新卒学生が就職活動の際に感じる不安や悩みに対して、建前ではなく赤裸々な「ホンネ」を配信しているメディアです。
タグのネーミングは、ターゲット層に寄り添う姿勢を表現したものでしょう。コンテンツ構成も、シビアな就職活動に取り組む学生のために、就職活動に直結する情報をはじめ、著名人が仕事観を語るインタビュー特集、クスッと笑える4コママンガなど、緩急がつけられています。
就職活動は、時期によって学生の抱える不安や悩みが変動するのが特徴です。サイドバーの人気記事ランキングは、その時期のニーズに即応する「今週」と、普遍的なニーズをキャッチする「トータル」の2種類が設けられています。
サイドバーに表示される自社サービスのバナーが、コンバージョンへの導線です。
人材系オウンドメディア成功のカギは、「外注との連携」と「自社メンバーのコミット」にあり!
今回ご紹介したオウンドメディア事例が成功したおもな要因は、次の3点でした。
- 質と量の両輪でコンテンツを制作していく「熱意とエネルギー」
- クライアント企業もコンテンツ制作に「コミット」
- Webマーケティングと営業の「連携」
弊社は、これらの要因のパフォーマンスを最大化するオウンドメディア戦略を設計し、伴走していきます。コンテンツマーケティングやオウンドメディア運営をご検討の際は、ぜひお気軽にリンク先の無料相談をご利用ください。
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