SGEは、2024年1月現在Googleが試験導入している検索体験の新たな様式です。一部の検索キーワードに対して、最新のAIを用いた回答が表示されることを確認しています。
SGEは将来的に常設される可能性があるため、企業サイトのSEO担当者にとって動向を押さえておきたいことの一つです。
この記事では、SGEについて2024年1月時点でわかっていること、今後のSEOに対する影響を予測しSEOのプロの視点でねぎお社長が解説しますので、ぜひ参考にしてください。
SGEとは生成AIによる新たな検索体験
SGEは「Search Generative Experience」の略で、ユーザーが入力した検索キーワードに対してAIが自動回答する、Googleの新たな機能の名称です。米国では2023年5月から、日本では同年8月30日から試験的に導入されました。
なお、すべての検索キーワードに対してSGEが回答するわけではありません。SGEによる回答が得られる場合は、以下の画像のような表示が確認できます。
さらに米国では、以下のような機能も追加導入されています。
- イラストの自動生成機能
- 発注書やメールの返信文といった文書の生成機能
- 回答の重要な部分を太字やハイライトで強調して表示する機能
- 特定の文章へのプレビュー機能(ポップアップ)
- 画像付きレシピを紹介する機能
- 具体的な悩みを解決する実際の商品を紹介する機能
なぜGoogleはSGEを導入したのか
SGEを導入した理由について、Googleは公式ページ内で以下のように回答しています。
今回の新たな取り組みにより、ユーザーがトピックをより早く理解したり、新しい視点や洞察を発見したり、知りたい情報により簡単にアクセスしたり、複雑で時間のかかる作業をより効率化できるようサポートします。
引用元:生成 AI による検索体験(SGE)のご紹介|Google Japan Blog
上記からわかるのは、Googleは「ユーザーが欲しい情報を提供する」だけに留まらず、ユーザーが真に欲しているものを理解した最適なサポート役を目指していることです。
また、同様の内容は、「Google が掲げる10の事実」内でも確認できます。
ユーザーが、自分が何を見つけたいのか正確にわかっていない場合でも、Google がユーザーに代わって、ウェブで答えを探します。Google は、全世界のユーザーがまだ意識していないニーズを予測し、新たなスタンダードとなるプロダクトやサービスを作り出しています。
引用元:Googleが掲げる10の事実|Google
ユーザーを第一に考えるというGoogleの基本理念は、最新のAI技術が導入されはじめている今でも変わりません。
SGEとBard・ChatGPTの違い
SGEは、ほかの生成AIと比較してどのような違いがあるのでしょうか。Googleが提供する「Bard」、OpenAIが提供する「ChatGPT」とのおもな違いは以下のとおりです。
SGE | Bard | ChatGPT | |
提供元 | OpenAI | ||
利用方法 | キーワード検索 | チャットボット | チャットボット |
出力形式 |
|
|
|
強み | 検索結果の要約 | 汎用性 | 汎用性 |
使用言語 | PaLM2やMUM | PaLM2 | GPT |
利用期間 | なし | なし | なし |
SGEの特筆すべき強みは情報の鮮度です。SGEはGoogleがインデックスした最新のデータを含めた検索結果を要約して回答していると考えられるため、より新しい情報を得られる可能性があります。
一方でChatGPTは、事前に学習した特定の期間までのデータをもとに回答しているため、SGEに比べて最新情報に弱い特徴があります。
SGEと同様にGoogle社が提供しているBardは、2023年12月に発表されたばかりの高性能AIモデル「Gemini」の導入が一部で始まっており、今後に注目が集まっています。
SGEを有効にする設定方法と解除方法
SGEの機能を体験するためには、次のような設定が必要です。
1.Googleアカウントにログインした状態で、SGEのサイトにアクセスする
2.以下の画面が表示されたらトグルボタンをクリックして、機能を有効にする
3.利用規約へ同意するボタンをクリックする
以上の設定を行なったうえでGoogleの検索窓に検索キーワードを入力すると、キーワードによってはSGEの回答が表示されるようになります。
SGEの解除は、手順2のトグルボタンを再びクリックするだけです。
なお、2024年1月現時点でSGEは、シークレットモードやGoogle Workspace for Educationを含むGoogle Workspace アカウントからの利用には対応していないため注意してください。
SGEが表示されやすいキーワードの傾向として、Knowクエリとも呼ばれる「インフォメーショナルクエリ」が多いようです。インフォメーショナルクエリの具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
- タイヤの交換時期は
- NISAと投資の違い
- ダイエットにいい食べ物
クエリの説明については、以下の記事内で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
Google検索品質評価ガイドラインのNeeds Metとは
SGEの実装で強調スニペットはどうなるのか
SGEの実装によって、強調スニペットが存続されるのか危惧している方も少なくないはずです。
SEO的な観点からも、強調スニペットを表示させることは検索流入を獲得するために重要なポイントでした。しかし、SGE導入後は、これまで強調スニペットやリスティング広告などが表示されていたページの最上部にSGEの回答が表示されています。
こうした現状から考えられるのは、SGEと強調スニペットが共存する可能性です。
SGEの回答の全文を表示させるためには、「もっと見る」ボタンを押すアクションが必要なことからも、Googleは、何らかのロジックでSGEと強調スニペットを使い分けると予想します。
SGEとYMYL・E-E-A-Tの関係
YMYL(=Your Money or Your Life)と総称される、金銭や健康など検索ユーザーの人生にかかわるようなキーワードに対しても、SGEは結果を表示します。
例えば、以下は、「うつ病 再発防止」というキーワードで検索した結果です。
「試験運用中のため、品質にむらがある可能性があります。」「情報提供のみを目的としており、医療上のアドバイスや診断を行うものではありません。」と注意書きはあるものの、AIによる回答が表示されます。
SGE導入以前から、GoogleはYMYLの取り扱いに特に慎重になっている傾向がありました。そのため、SGEの回答を生成する際には、E-E-A-Tを適切に満たしているサイトの情報を参考にするなど、ある程度の線引きをすると予測できます。
E-E-A-TはGoogleが重要視している評価基準で、「Experience(経験)」「Expertise(専門性)」「Authoritativeness(権威性)」「Trust(信頼性)」を意味する言葉です。
GoogleはE-E-A-T をより重要視する方針を掲げているため、今後もあらゆるサイトでE-E-A-T の高いコンテンツ作りが求められます。
E-E-A-T およびYMYLについては以下の記事で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
Google検索品質評価ガイドラインの要約とSEOへの活用方法
SGEの登場で今後の検索流入はどう変化するのか
サイト運営者にとって気がかりなのは、SGEの導入によるサイト流入数の変化ではないでしょうか。
SGEが今後本格的に実装された際の変化を、広告流入とSEO流入(検索流入)の観点からそれぞれ予測します。
広告流入の変化
SGEの本格実装によって広告の表示方法に何らかの変化が起こる可能性はあるものの、広告主に不利益な方向には変化しないと予測します。
Googleの収益のほとんどは広告費であり、広告の出稿数が減り兼ねない変化はGoogleも望んでいないはずだからです。実際、Googleも広告流入に大きな影響は与えないと公言しています。
なお、現状の広告表示方法は、検索結果によって以下3つのパターンが確認できます。
- SGEが表示されたキーワードではリスティング広告が表示されない
- SGEの機能をオフにしているユーザーにはリスティング広告が表示される
- リスティング広告の下にSGEが表示される
ただし、現状はさまざまな表示パターンの実験中であり、本実装の際にはSGEが必ずしも最上部に表示されるとも限らないため、今後何らかの変化は起こる可能性が考えられます。
SEO流入の変化
SEO流入(検索流入)も広告流入と同様に、SGE実装による大きな影響は受けないと予測します。Googleも広告流入と同様、検索流入に大きな影響は与えないとしています。
仮に検索ユーザーがSGEの回答だけで満足するようになると、検索上位のページでさえも流入数が激減し、サイト運営者にとって最終目的であるはずの収益につながりません。目的の達成が難しいとなれば、Googleにページを公開する運営者は減るはずです。
Googleの検索結果およびSGEの回答は、これまで公開されてきた多くのページからできています。情報の提供元が減ることは、Googleの今後にとっても不利益です。
そのため、SGEを本格実装する際も、SEO流入に悪影響をおよぼしすぎない程度で留めると予想します。
ねぎお社長の未来予測!SGEは今後どうなる?
試験段階のSGEが今後どうなるのかは誰にもわかりませんが、SEO歴18年の私ねぎおが考える3つの未来予測を紹介します。
1.SGEの影響範囲は限定的になる未来
SGEの影響範囲の広がりを懸念する方もいるかもしれませんが、今後も範囲を限定して実装される可能性も十分にあると予測します。
類似例として、強調スニペットのケースを思い出してみてください。強調スニペットが発表された際、「今後は検索結果をクリックするユーザーがいなくなる」との声もありましたが、実際にそこまでの影響はありませんでした。
SGEも同様に、SEOやリスティング広告への影響は抑えつつ、限定的な実装となることは十分考えられます。
2.SGEの内容がブラッシュアップされる未来
試験導入されている現在のSGEから、さらに改良された形で本実装される可能性も考えられます。
例えば、検索流入の減少を防ぐ目的でSGE内に広告枠ができるなど、サイト運営者への影響を抑えるような改良があるかもしれません。本実装までに何らかの改良を加える可能性は高いと言えるでしょう。
3.現在の仕様のまま実装される未来
試験段階である現在の仕様のまま、本実装へと移行する可能性もゼロではありません。
2024年1月現在の仕様だと、強調スニペットが表示されなくなったり、検索結果がSGEの下部に追いやられたりという不利益が生じることも想定されます。
このようにあらゆる可能性があるなかで、影響範囲は限定的でありながら、現在よりも改良された状態で実装されるというのが現状の予想です。
SGEの実装で重要度が高まるSEO対策のポイント
SGEの実装にともなって、今後のSEO対策の方向性を模索している方も少なくないはずです。しかし、結論からいうと、SEO担当者にとって大きな影響はないと考えます。
これまで通りユーザーの求める情報を適切な方法で提供し続けることが、Googleからの評価を得るうえで重要なことは変わりありません。
ここでは、SGEの実装にともなって特に重要度が高まると予測する3つの要素を解説します。
E-E-A-Tの重要性の向上
Googleが近年特に重要視しているE-E-A-Tは、SGEの導入によってさらに重要度が増すと考えられます。
SGEがより正しく詳しい情報を表示しようとするとき、E-E-A-Tを満たしているサイトが参考元として優先的に選ばれると考えられるためです。
例えば、執筆者が不明の記事よりも、専門家が執筆や監修をした記事のほうが信頼性が高く評価されるのは当然のことです。
今後もしかすると、SGEに「参考にしたサイト」や「関連サイト」を表示するアップデートがあるかもしれません。今からSGEに参考にされるようなE-E-A-Tの高いサイトを意識して作っておけば、表示された「参考にしたサイト」や「関連サイト」のリンクから新たな流入を得られる可能性があります。
オリジナル性・一次情報の重要性の向上
ほかのサイトとの差別化を計るためのオリジナリティも、今後ますます重要になると予測します。多くのサイトで確認できる画一的な情報ではなく、独自の情報を提供する重要性は益々高まるはずです。
独自の情報には、自社で行なった調査や実験で得たデータ(一次情報)、その考察などが挙げられます。これらの情報はGoogleから評価され、SGEの回答の参考元として採用される可能性も高いと考えられます。
ファクトの重要性の向上
コンテンツ内の情報の正確性は、これまで以上に大切なポイントです。
SGEの実装にともない、Googleは「正しい情報を提供する」ことにより注力すると予想します。
コンテンツ作成時には、情報元の信頼性を確認したり、専門家に監修を依頼したりして正しい情報の提供を意識してください。
まとめ
SGEはあくまで試験的な段階であり、本実装までに何らかの改良が加えられる可能性は十分あります。ただし、本実装されたあともサイト流入やSEO対策への影響が甚大となることは恐らくないでしょう。
いずれにしても、これまで通りユーザーを第一に考えたコンテンツ作りが重要なことに変わりはありません。
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