ユーザー行動がSEO順位に影響を与えるかどうかについて、Googleは公式で関連付けることを否定しています。一方で、Googleの特許のなかにはユーザー行動を考慮した評価モデルが確認されています。また、事例からも改善効果が示唆されていることから、何らかの関連性があることは否定できません。
とはいえ、過度にユーザー行動とSEO順位の関係にとらわれるべきではないでしょう。ユーザーインテントに応えるコンテンツ作りこそが最重要です。
本記事では、ユーザー体験を意識した具体的な施策を通じて、ユーザー行動を改善することでSEO効果も得られる可能性があることを解説します。
動画でも解説していますのであわせてご覧ください。
ユーザー行動とSEO順位の本当の関係性
前述の通りユーザー行動とSEO順位に関係性について、Googleは否定しています。もしユーザー行動がランキング要因になれば、不正なランキング操作が簡単にできてしまうためでしょう。
しかし、Googleが取得している特許のなかには「リーズナブルサーファーモデル」というものがあります。これはユーザー行動(具体的にはリンククリック率)に応じて、リンクジュースや評価をするというものです。つまり、Google自身が「ユーザー行動とSEOを紐づける特許の提出をしている」ということになります。このことから、ユーザー行動がSEO順位に影響を与えている可能性は十分に考えられるのです。
また、Bingのアルゴリズムでは、ユーザー行動がランキング要因になっていることを公表しています。
Googleが公式に認めていないものの、検索エンジンにおいてユーザー行動とSEO順位には何らかの関係性があると推測できます。
しかし、サクラサクマーケティングでは、これは過度に気にし過ぎるべきではないと考えます。なぜなら、ユーザーインテントに応えられるコンテンツ作りこそが根本的に重要だからです。
※2024年6月追記
2024年5月にGoogleのアルゴリズムに関する内部文書が流出しました。
その中には、”goodClicks”, “badClicks”, “lastLongestClicks”などのユーザー行動を観測して思われるモジュールが存在しているとされています。
Googleはこの文書が本物であることを認めていますが、これらがランキングにどのように、どの程度関与しているのか記載されているわけではありません。仮にランキングに影響するのであれば、ユーザー行動はランキング要因ではないとするGoogleの従来からの説明と異なることになります。
このような状況では、よいユーザー行動を促進することはSEOにもよい影響を与えるという前提で施策を進めるのがよいと考えられます。
ランダムサーファーモデルとリーズナブルサーファーモデル
上述したリーズナブルサーファーモデルと、併せて登場するランダムサーファーモデルについて補足します。
ランダムサーファーモデルは、Googleが提唱するページランク算出モデルの一つです。Webを無作為に移動するサーファーを想定し、リンクの重みづけによりページランクを計算します。今回ご紹介したリーズナブルサーファーモデルは、ランダムサーファーモデルをアップデートしたものです。
そして上述の通り、リーズナブルサーファーモデルでは、ユーザーが合理的に振る舞うと想定して評価を行なっています。
具体的には、以下のようにユーザー行動をシミュレートしています。
- ユーザーは検索結果の上位からリンクをたどっていく
- リンク先のページを閲覧し、その内容が質の高いものであれば、さらにそのページ内のリンクをたどっていく
- 一方で、リンク先のページの内容が不十分であれば、検索結果に戻り次のリンクを選択する
このようにユーザー行動をシミュレートしながら、ページランクやリンクジュースなどの評価値を算出していきます。
つまり、ユーザーにクリックされ、ユーザーが満足できるコンテンツであれば高い評価を受けるということになります。リーズナブルサーファーモデルは、このようにユーザー行動を重視した評価モデルなのです。
ランダムサーファーモデルとは異なり、ユーザーの合理的な行動を想定した新しいアプローチとなっています。Googleがユーザー行動を完全に無視しているわけではなく、ある程度考慮にいれていることがわかります。
このような情報は、Googleの特許の取得状況、申請状況などを確認することで、いち早く得られることができます。
例えば、以下の方法で検索が可能です。
まずWIPOが運営する特許検索サイト(https://patentscope2.wipo.int/search/en/search.jsf)にアクセスします。
そして、右上のリンク「検索」⇒「構造化検索」にて、出願人で検索できる画面に移行します。(メニューが英語になっている場合、日本語にするとわかりやすいです。)
最後に、検索フィールドに「出願人指名」を設定したら、「グーグル」などのキーワードで検索します。
自分で直接特許を読むのは少し難解かもしれませんが、特許の内容を分析したブログ記事やAIでまとめを作成するなどすれば、わかりやすい解説を見つけられるかもしれません。最先端の技術動向を知る一つの手がかりになるでしょう。
テック企業の特許はその会社の進む方向性が垣間見えるため、SEOに携わる人であれば気になるところではないでしょうか。Googleだけでなく、他のIT企業の特許も調べてみると面白いかもしれません。
SEOとユーザー行動が関連している事例
Googleがユーザー行動をSEO要因として公式に認めていないため、SEOとユーザー行動の関連性を完全に証明することは難しいものの、実際にユーザー行動の改善によってSEO効果が得られた事例が存在します。
例えば、Moz.comでは新しいドメインへの移行を行なった際、直帰率や滞在時間などのユーザー行動指標の改善に注力しました。その結果、検索トラフィックが大幅に増加したことが報告されています。
この事例はあくまで相関関係を示すものです。ですが、コンテンツの改善やUIの最適化などユーザー体験を意識した施策を行なうことで、ユーザー満足度が高まり、結果としてSEO順位が上がったと考えられます。
また、コンバージョン率を最終目標とした場合でも、コンバージョンの過程でユーザー行動の各段階が適切であることが求められます。検索結果からのクリック⇒コンテンツ閲覧⇒サイト内回遊⇒コンバージョンと進むプロセスの各ステップで、ユーザーが満足できていないと前の段階に戻ってしまいます。
このように、単純に優れたコンテンツがあれば十分というわけではありません。ユーザビリティやエンゲージメントを考慮することで、ユーザーの目的を叶え、結果としてSEOやコンバージョンにも良い影響を与えるのです。
ユーザー行動の改善をする具体的な手法
ユーザー行動を改善するためには、さまざまな側面から施策を講じる必要があります。ここでは具体的な手法について紹介していきます。
コンテンツの最適化
- タイトルの改善でユーザーの期待にあった内容であることを明確にする
- 本文の内容を改善し、ユーザーの質問に答えるように情報を追加する
- コンテンツの構成を見直し、ユーザーが知りたい情報をより上部に配置する
- 適切な箇所に関連コンテンツへのリンクを設置し、サイト内回遊を促す
コンテンツの最適化は、ユーザーが求める情報をストレスなく得られるよう、内容の改善を行なうことが肝心です。タイトルをわかりやすく改善することで、ユーザーが期待する内容とマッチさせます。本文もユーザーの疑問に答えられるよう、情報の追加や書き換えを行ないましょう。
また、構成を見直してユーザーにとって大切な部分を先に提示し、関連コンテンツへのリンクを適切に設置することで、サイト内の回遊性を高めることができます。
なお、こうしたコンテンツの最適化を行なう際は、ヒートマップツールなどを活用すると便利です。ヒートマップツールの導入で、どこで離脱されているのか、どこがクリックされているのか、どこまで読み進めているのか、などがわかるようになります。
ヒートマップツールが未導入であれば、Microsoft社が無料で提供しているClarityから始めることをおすすめします。
内部リンク最適化
- コンテンツ間のリンクを見直し関連性を高める
- ページ離脱が多い箇所にリンクを設置し、関連コンテンツへ誘導する
- ユーザーが自然な流れでサイト内を回遊できるようにする
内部リンクの最適化では、ユーザーがストレスなくサイト内を移動できるようリンク構造を整備します。コンテンツ間のリンクを合理的に設置し直し、離脱が多い箇所には関連コンテンツへのリンクを設けることで、ユーザーを抜けさせずにサイト内に停められるようにします。
このようにリンクを最適化することで、ユーザーが自然な流れでサイト内を回遊できるようになります。
ユーザビリティを意識したサイト構成
- サイト階層やメニュー構成を見直し、ユーザーが目的のページに到達しやすくする
- パンくずの設置などで、現在位置を明確にする
- ユーザーがサイト内を効率的に移動できるよう配慮する
ユーザビリティを意識したサイト構成の実現には、まずサイト階層やメニューなどの大枠を整理し、ユーザーが目的のページに素早くたどり着けるようにする必要があります。さらに、パンくずなどを設置して現在位置を明示し、ユーザーが自分のいる場所を確認しながらスムーズにサイト内を移動できるようにします。
こうしたユーザー視点のサイト構造を心がけることで、ストレスの少ない効率的な閲覧体験が提供可能です。
なお、ユーザビリティに関しては、こちらの記事も併せてご確認ください。
モバイルユーザビリティとは?テストの実施方法とエラーの改善方法を解説
デザイン調整
- 見出しやリンクの視認性を高める配色の改善
- 余白を増やすなどしてコンテンツの可読性を高める
- CTAボタンの導線化などでユーザーの次の行動を明確に促す
デザイン面でのユーザー体験改善も重要です。
まずは見出しやリンクの配色を工夫し、視認性を高めることで、ユーザーが必要な情報をストレスなく探せるようにします。また、余白を適切に確保するなどして、可読性の向上も図りましょう。さらに、CTAボタンの導線化を行ない、ユーザーが次にとるべき行動を明確に促します。
こうしたデザイン調整を行なうことで、ユーザーの滞りない快適なサイト閲覧を実現できます。
ページスピード改善
- 画像や動画のファイルサイズを軽量化する
- 不要なリソースファイルを削除する
- サーバーの応答性能を改善する
ページスピードの改善も欠かせません。
まず画像や動画ファイルを軽量化することで、ページの重さを減らします。さらに不要なリソースファイルを削除し、無駄な負荷をなくします。加えてサーバーの応答性能を高めることで、素早い読み込み速度の実現が可能です。
このようにページ資源の最適化とサーバー強化を組み合わせることで、ストレスのないスムーズな閲覧体験を提供できるようになります。
なお、ページスピードを改善する際は、ページスピードインサイトの活用をおすすめします。少し専門的なツールですが、URLを入れるだけで改善が必要な項目の一覧を出すことができます。
また、使い方については、こちらの記事も併せてご確認ください。
ページスピードインサイトの使い方とコアウェブバイタル(LCP/FID/CLS)のスコア改善方法
地道な施策がユーザー行動につながる
ユーザー行動の改善は一朝一夕でできるものではありません。ユーザーインサイトをもとに、コンテンツ、サイト構造、UIデザイン、パフォーマンスなど、さまざまな側面から地道に施策を重ねていく必要があります。
一つひとつの効果は小さくとも、それらが重なることでユーザー体験は確実に向上していきます。ストレスなくスムーズにサイト内を回遊でき、求めていた情報を手に入れられれば、ユーザーは満足感を得られるはずです。
こうしたユーザー体験の向上こそが、結果としてユーザー行動の改善につながっていくのです。Googleが公式に認めていないものの、ユーザー行動の変化は検索エンジンにもキャッチされる可能性が高いと考えられます。
そのため、一時的なトリックに頼るのではなく、ユーザーファーストの姿勢でサイトの根本的な課題に着実に取り組んでいくことが重要になります。地道な活動の積み重ねこそが、ユーザー行動の改善とSEOの好循環につながるのです。
サクラサクマーケティングでは、SEOコンサルティングを通じて、こうした施策出しのお手伝いも行なっています。もし自社ではリソースが足りない、ある程度やってみたけどこれ以上はわからない、といったお悩みをお持ちの場合、ぜひ一度ご相談ください。